第55回研究会「たかが体臭・されど体臭!!」

2020年12月5日(土)14:00-16:30

議題:「たかが体臭・されど体臭!!」
講演者:神田不二宏(武庫川女子大学 薬学部 客員教授・日本化粧品技術者会 運営役員 国際副委員長・国際化粧品技術者会連盟 フェロー)

会場:(株)資生堂 汐留ビルB1F PIT ・オンライン:ZOOM

神田先生は、2018年まで資生堂で研究員をしていらっしゃいました。そのご経験から、「たかが体臭・されど体臭!!」と題し~体臭の原因物質の解明から製品開発の歴史・進化~について発表されました。

まず初めに、体臭とは、汗・皮脂などに含まれる成分を皮膚上の菌が分解することによって発生する揮発性物質に由来するであることが解説されました。

1980年代のデオドラント製品は汗臭の発生を予防することを重点的に狙ったものであり、一度発生してしまった汗臭に対しては香料によるマスキングで隠蔽するという必ずしも効き目が保証されていない対処法に頼らざるを得ず、高い効果は期待できなかったことが欠点でした。

そこで、既に発生してしまった汗臭に対しても有効な新規消臭剤を開発することを研究の目的とし、汗臭の原因物質を化学的に解明すること、そして、その原因物質を封鎖、消去するための有効な方法を探索するという順序で研究を推進しました。

その結果、体臭の臭いの素は「低級脂肪酸」であり、その臭いを消す方法として「酸化亜鉛」が有効であることを解明されました。

しかし、酸化亜鉛は凝集しやすい性質があり、当時のデオドラント製品の主流であったスプレー式では、噴射口が詰まってしまうという難点がありました。

そこで、球状合成樹脂の周りに酸化亜鉛を被覆させたハイブリッドパウダーを生み出し、この問題を解決されました。この様にして酸化亜鉛によって揮発性低級脂肪酸を不揮発性の低級脂肪酸塩に変換することによる汗臭に対して有効な新規消臭剤を開発されました。

参加者としての所感

体臭の原因物質から製品開発までの過程を、化学的な理論だけではなく研究秘話を交えながら発表してくださいました。

特に印象深かった内容として、体臭の原因物質が「低級脂肪酸」であることを解明するまでに多くの汗のサンプルを必要とした為、研究員自ら卓球大会などを催したエピソードが挙げられます。

卓球大会には同期入社の男性を中心とした会社の同僚を募り、汗をかいてもらうことで多くのサンプルを集め、その臭いを嗅いだそうで、研究開発の苦労の中にも、研究チーム・同僚とともに楽しみながら生き生きと研究されていた雰囲気を感じることができました。

神田先生の研究者魂に触れ、探求し続ける熱いエネルギーを感じることのできる大変有意義な時間でした。

(櫻井 英里)


神田先生が客員教授をされている武庫川女子大学薬学部のホームページに、このページをリンクしていただきました。

客員教授からのお知らせ「【国内講演】たかが体臭、されど体臭!!」武庫川女子大学薬学部 化粧品科学
【国内講演】たかが体臭、されど体臭!!

ありがとうございます。

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