2020年8月29日(土)

美、化粧、そして「子どもらしさ」:文献調査と卒業論文から

(ZOOMオンラインにて開催)

●テーマ1
「インターネット検索による直近5年の化粧文化トピックス」

講演者:㈱資生堂(S/PARKミュージアム担当) 櫻井英里氏

櫻井氏は、ビューティー・コンサルタント、資生堂S/PARKミュージアム勤務のご経験をいかして、化粧研究を行っていらっしゃいます。第54回研究会では、Google Scholar(検索ワード:「化粧&文化&メイク」)から抽出した146論文をもとに、発表されました(以下)。
近年の変化として、「マストアイテムからプラスワンアイテムへ」、「TV雑誌からSNS、YouTubeへ」、「女性からジェンダーレスへ」の三点が指摘された。分析対象論文の中のアンケート調査では、「美人」は外見美に、「美しい人」が内面美に対応していることが示唆された。
また「子どものおしゃれ」に関する論文では、中学生、高校生の多くが化粧の経験があることが示されていた。
100円ショップのように手軽に化粧品が入手できる場が増えている反面、皮膚や化粧の知識不足から未成年の化粧トラブルも生じている。「化粧教育」の必要性、S/PARKミュージアムへの期待が論じられた。

●テーマ2
「現代社会で求められる子供らしさとは何か~化粧の低年齢化に関する議論から考える」

講演者:都留文科大学4年 當山りせ氏

文学部4年の當山氏は、化粧研究者ネットワーク運営委員の山本芳美教授のゼミに所属され、装いという視点から社会について研究をされています。
第54回研究会では、現在執筆中の卒業論文の中から、「子どもと化粧」に関連した部分を発表していただきました(以下)。
調査研究機関によるアンケート結果では、10代前半、10代以下の子どもたちの多くが、マニキュアやリップや口紅などの化粧品を使用したことがあると回答している。
こうした化粧の低年齢化の契機には、1990年代の「JK(女子高生)ブーム」があげられる。
玩具メーカーをはじめ、子ども用化粧品の販売を拡大した。「子供らしさ」とは「純粋さ」なのか、化粧は「他者」を意識した自己形成なのか、さらに校則の問題など、卒業論文全体の構成も含めて論じられた。

●全体討議

発表後に参加者全員で活発な討議が行われました。
化粧の低年齢化及びそれに伴う皮膚トラブルの発生、母親の影響、「校則」との大きなギャップの指摘は、「化粧教育」が急務であることを示すものでした。
また一般に用いられている「化粧」という語がまとう意味(成人女性、メイクなど)によって、ジェンダーバイアスや誤解が喚起される点も話題になりました。
「日焼け止め」「ベビーオイル」「化粧水」「アフターシェーブローション」などの「商品名=ことば」が、多岐に亘る化粧実践をカテゴリー化している様子が垣間見えます。
今後の研究展開に関しても、「美人」と「美しい人」はどのような英訳になるのか(櫻井氏)、「子どもの化粧」は具体的に誰が誰に対して行っているのか(當山氏)などが提起されました。
化粧研究は、SNS、インスタ、Covit-19が席巻する現代社会を読み解くためには欠かせない視点だと確信する研究会でした。