議題:「歴史の中のジェンダーとセクシュアリティ」
講演者:三橋順子(性社会文化史研究者)
日時:2023年3月11日(土)
ハイブリッド形式(会場:株式会社資生堂汐留ビル、およびZoomオンラインミーティング)
ようやくCovid-19に収束のきざしが見えはじめた時期に開催された第62回の研究会は、資生堂本社の会議室にて開催したもののハイブリッド形式をとった。
研究会では、12年前に東日本大震災が発生した「14時46分」に1分間の黙とうをはさみ、三橋氏よりお話をうかがった。
今回は2022年7月に刊行された『歴史の中の多様な「性」―日本とアジア 変幻するセクシュアリティ』(岩波書店)に基づく内容で、セクシュアリティが社会的につくりあげられた「構築主義」の視点から、日本とアジアを中心に多様な性のあり方を紹介された。
三橋氏の説では、現代日本で「当たり前」とされている性意識は、日清・日露戦争までに欧米の性規範の影響を受けて徐々に変化をしてきたとする。前近代では衣服をまとった状態の外見、「なり」を重視する社会で、若衆と娘の性的欲望は双方向的なものであった。
大人の男性の欲望も両者に向けられ、妻は「色」の対象ではなかったという解説を皮切りに、著書を補足するエピソードと写真を多数紹介されていった。
三橋氏は執筆の動機を、「日本のLGBT運動は、1969年にアメリカで起きたストーンウォールの反乱からではなく、日本の歴史的背景に基づくものにしないと本当に社会を変える力にはならない」との問題意識があったと語られていた。
当日の会場ではおよそ2年ぶりに北山晴一先生以下、世話人と参加者が集まり、終了後も三橋氏を囲んで、化粧文化を中心とした話題に花を咲かせたなごやかな時間となった。
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