第58回研究会『ハゲに悩む ─劣等感の社会史』読書会

2021年12月18日(土)

(ZOOMオンラインにて開催)

森正人先生をお迎えしての、『ハゲに悩む―劣等感の社会史』読書会

2021年12月18日14時~17時、第58回研究会は、『ハゲに悩む―劣等感の社会史』(ちくま新書2013年発行)の読書会をオンラインで開催しました。

参加者は18名で、男性の身体について、様々な角度から意見を交換しました。著者の森正人先生(三重大学人文学部教授)もお迎えできたことで、地理学からのアプローチの面白さにも触れることができました。

本書は、聞き覚え、見覚えのあるテレビコマーシャルから始まります。そして薄毛・脱毛についての評価の歴史的変遷、とりわけ近代以降、それらが近代医学的な見地から説明され直すようになった経緯が論じられます。

メディア、養毛剤・頭髪化粧品、かつらビジネスなどによって、薄毛・脱毛現象が積極的に語られることで、劣等感や不安感が集団的なものとなっていく過程が示されます。

現在、薄毛の予防と治療は、頭皮につけるものから錠剤を体内に取り込むものまで、幅が広がりました。同時に、自分もいつか禿げるかもしれないという脱毛不安も醸成され続けている、と著者は指摘しています。

男性の薄毛についての感情や経験が、知識(医学など)や物質(かつら・養毛剤など)との相互作用的な関係の中で生み出されていることを実感できる内容です。

読書会では、川添裕子(世話人・松蔭大学)が要約を行い、その後に、川野佐江子(世話人・大阪樟蔭女子大学)から「『男らしさ』と『男性身体』」の視点からの話題提供がありました。

男らしさはしばしば一様なものとして捉えられがちですが、男性間の中での階層差など、もっと具体的に詳細にみていく必要があることも見えてきました。

参加者からは、後頭部という自分では見えない部分を他者に見られる不安、欲望の喚起の仕方、薄毛の隠し方自体が醸し出す恥ずかしさなどのコメントがありました。

これらを受けて、薄毛を元に戻すだけではなく、その過程を美しくしていく製品づくりという方向性も見出されました。

著者の森先生からは、広告や鏡など、自分と他者が作られる回路が張り巡らされている状況も指摘されました。コロナ以降、たとえば公共交通機関に掲載されている広告は、AGA、脱毛、転職サイト、結婚相談所などで埋まっています。知らず知らずのうちにそれらの価値観、世界観に巻き込まれていることに気づかされます。

身体、美、身体ケアはもっぱら女性を対象に研究されてきました。本書を契機に、男性の劣等感、男らしさ、男性の身体について掘り下げていくことが必要だと痛感しました。

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