2019年9月13日(金)

議題:「化粧品の科学技術史」
講演者:岸本治郎((株)資生堂 グローバルイノベーションセンター 再生医療開発室長)

会場:大阪樟蔭女子大学 小坂キャンパス

講演者の岸本先生は、髪の毛を研究し続けて20年以上で、資生堂ライフサイエンスセンター毛髪科学研究所長等を経て現職の、日本における毛髪再生医療の第一人者である。講演では再生医療だけでなく毛髪全般についてお話をうかがった。

薄毛、脱毛症は医療と美容の境界領域に位置付けられ、死に至るような重篤な疾患ではないが、外見が大きく変わるため、精神的な苦痛を伴い、性別を問わず社会生活に深刻な影響を及ぼす。毛髪再生医療は、サイエンスとして確立された最先端の学問領域(発生生物学)でもある。

壮年性脱毛症(AGA)の日本人男性の発症率は30代で20%、40代で30%、50代で40%であるが、実は薄毛の人も毛髪数は意外と変わらないというデータが示された。本数が減っているのではなく太さが見た目に影響を与えていて、毛包組織は残っているが毛包がミニチュア化(細毛・産毛)化しているということだった。

植毛については、自毛を植える技術が開発されていて、後頭部の毛の残っているところをざっくり切り取って千本単位の毛包を1本ずつ田植えのように植えていく技術がある。

岸本先生がおこなっている再生医療は6mmくらいの小さな皮膚組織から10本単位のごく少量の毛包をとり、細胞を培養してから、薄毛になっているところに増やすため質量ともに植毛とは違う。最新の研究では毛包組織の中にある毛球部毛根鞘細胞(DSCC)が毛包誘導能力を有すると考えられていて実用化を目指している。男性の脱毛症には治療薬はあるが、女性にはないため抜本的な解決策として注目されている。

討議では、がん患者の女性にとっては乳房切除より脱毛のほうが苦痛という話や、ネイティブアメリカンに薄毛がいないのはストレスがないから?、また、ハゲという表現は気にする人がいるから使わないほうがいいのではないか。など、活発な議論がされた。

再生医療は山中教授のiPS細胞の発見以降、国をあげての研究の支援がされている分野で実用化に大きな期待が寄せられていることがわかった。