第49回研究会「“きれい”による生活文化の創造~“洗う”・“装う”化粧史を中心に~」

2018年128日(土)

議題:「きれいによる生活文化の創造~洗う装う化粧史を中心に~」
講演者:今井健雄 (花王株式会社スキンケア研究所)

会場:株式会社 資生堂 汐留ビル 1F PIT

 第49回研究会は、花王株式会社スキンケア研究所にて製品開発、カウンセリングなどに従事されてきた今井健雄先生をお招きした。洗浄と化粧の歴史を交互にたどりつつ、水資源とそのビジネスの動向まで言及する幅広い視野からの刺激的な内容であった。

 講演は、人類創生から入浴が重要な行為で儀礼でもあったことから幕を開け、身体を洗い、洗髪と化粧する歴史に絞って進められた。鳥獣戯画でも、川で身体を洗っている猿たちをウサギがひしゃくで水をくんで手伝う場面が描かれていることにわかるように、湿度が高い日本では昔から身体を洗うことが重要で、鎌倉時代には京都に銭湯が出現し、近世には「しゃぼん」(石鹸)が伝来した。日本人は基本的にきれい好きで、明治時代に入ると官立工場で石鹸の製造が始まり、明治101877)年には全国に13工場ができて需要を満たすほどの規模になったそうである。

 質疑応答では、「日本男性の汗くさいのがかっこよいという価値観はいつからか?」との質問に、「高校生が制帽に卵や靴墨を塗って、テカテカさせた。われわれの世代はそうですよね、原島(博)さん」と北山晴一先生から思わぬ話が飛び出した。今井先生によると、洗髪は、平安時代に年1回、江戸時代には月1、2回、昭和30年代に回数が増加しはじめており、第二次世界大戦後には男性の洗髪回数は女性なみになっている。しかしながら、毎日洗髪することが当たり前になったのは「朝シャン」という言葉が流行した90年代半ばであり、80年代で洗髪は20代の女性でも週2、3回だったという。日常生活ではシャンプーの使用水量が最も多くなっていることなど、理系の研究者らしく具体的なデータを挙げるスタイルで非常にわかりやすいお話であった。

 日本だけで水を節約するのは意味がない。「21世紀は水の世紀」であり、人口増加や気候変動により水資源の使用バランスは2025年から破綻し、2050年から戦争がおこる可能性があるとの指摘は、「文明度と水の使用量が相関する」との言葉があった直後だけに、現在の生活様式がこのままでよいかと参加者一同が振り返りたくなる幕切れとなった。

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