第48回研究会「日本におけるアロマセラピーの現在」

2018914(金)

議題:「日本におけるアロマセラピーの現在」
講演者:市邊昌史(国際アロマセラピー科学研究所理事)

会場:大阪樟蔭女子大学 小阪キャンパス

 第48回化粧文化研究者ネットワーク研究会は、まだ残暑厳しい9月に大阪樟蔭女子大学にて行なわれました。今回は、国際アロマセラピー科学研究所理事でいらっしゃる市邊昌史先生に「日本におけるアロマセラピーの現在」という演題でご講演いただきました。

 市邊先生は、日本におけるアロマセラピーの発展に大変ご尽力された方であり、日本のアロマセラピーの歴史、文化を知る第一人者です。

 もともとアロマセラピーとは、アロマ(芳香)とセラピー(療法)からなる造語で1930年代にフランス人の化学者ルネ・モーリス・ガトフォセによって命名されました。よって、フランスでは香りによる療法という意識が強いですが、日本では90年代から一般化しはじめ、独自の進化を遂げていきます。

アロマセラピーが日本に入ってきた頃はまだバブル期だったそうですが、その後90年代の半ばにバブルがはじけ、ストレス社会が意識されるようになり、「癒やしブーム」とともにアロマも世に浸透していきます。

 それにともない女性たちの間では、アロマセラピーを学びたい、資格を取って、アロマセラピストになりたいという思いが広がり、アロマ検定やアロマセラピストを養成するスクールが開校され、アロマ教育がさかんになっていきます。市邊先生によれば、女性の自立志向、資格をとり手に職をつけたいという熱意がこの発展につながったとのことですが、なかなか出口がないことから、近年は教育市場が小さくなってきているそうです。

一方で、アロマ全体の市場規模は2015年には、3337億円に達し、現在ではオーガニック志向の高まりなどを受け「アロマ化粧品」が市場を牽引するようになりました。確かに、ロクシタンをはじめ、ニールズヤードやコスメキッチンなど現在の私たちの周りにはアロマ化粧品が溢れています。香りに対する消費者の意識もこの20年で劇的に高まり、アロマディフューザーを筆頭に空間を香らせることが流行しています。

 物質的な豊かさよりも「居心地のよさ」を求める社会において、今後アロマセラピーの重要性はますます高まるのではないでしょうか。「香りは記録に残せないが、記憶に残せる」という市邊先生の言葉が印象的でした。まるで、プルーストのマドレーヌのように。

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