第45回研究会「化粧の日本史 美意識の移りかわり」

2017年12月16日(土)

議題:「化粧の日本史 美意識の移りかわり」
講演者: 山村博美(化粧文化研究家)

会場:資生堂 ビューティークリエーション研究センター

45回研究会は、2016年に『化粧の日本史』を吉川弘文館から上梓された山村博美先生をお招きした。本書は化粧文化研究の分野では、古代から昭和末期までの化粧文化の変遷を通観できる数少ない入門書でもあり、企画した世話人一同、お話を楽しみにしていた。

第一部は、山村先生の講演であり、本会創立時に世話人代表の故・村澤博人氏を上司としてポーラ文化研究所に勤務された当時のエピソードが冒頭で明かされた。一同で村澤氏を偲んだあと、山村先生から明治時代以降から2010年頃までの化粧文化史をお話いただいた。著書に盛り込めなかった各時代の流行や新聞雑誌などの広告、特集記事など、収集された資料を提示されながら、2時間にわたってのお話が続いた。各時代に発売された化粧品とそのパッケージ、化粧の具体例を紹介されたほか、映画や企業マーケティングのマーケティング、メイクアップアーティスト発のブランドと各時代における化粧のトレンドとの関係などにも言及された。

第二部の討議と懇親会では、「最近、化粧への拒否感を卒論のテーマとする学生が同時多発的に現れているのをどう思うか」との質問に端を発し、その考察や現象自体に対する憂慮を含めた活発な議論がなされた。70年代のウーマンリブ、80年代のフェミニズムなどの主義主張ではなく、何となくの忌避をどう解釈すればよいのだろうか。

山村先生からは、各社が次々に発表する製品の効能が呪文化していて、わかりづらくなっていることが指摘された。世話人代表の北山晴一からは、ここ10年多くなったマスク姿は、日本で長く続いた「顔隠し」の文化の復活でありつつも、バーチャル世界が優越しつつある現代人のあいだに、現実との落差に対する過剰反応が広がっているのではないか、との見解が示された。出席者からは、化粧が「キレイ」のため、とは一面的な考え方であり、自分の顔の良いところを見つけ、それを伸ばすものである。化粧を人とつながる、社会でうまくやっていく技術のひとつと考えたほうがよいとの若い世代への助言も寄せられた。

今回は、20171210日に終了した紅ミュージアムの企画展「近代香粧品なぞらえ博覧会」と併せて、日本の化粧文化史や各現象に関してさまざまな示唆を与えてくれた会となった。

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