第44回研究会「ショップチャンネルからみる化粧文化」

2017年9月15日(金)

議題:「ショップチャンネルからみる化粧文化」
講演者: 小出治都子(大阪樟蔭女子大学 学芸学部 化粧ファッション学科 講師)

会場:大阪樟蔭女子大学

通信販売は、古くて新しいビジネスシステムだ。古くは19世紀末のシアーズ・ローバック(Sears、 Roebuck and Company )によるカタログでの通信販売が知られているし、近年ではAmazon。comなどネット通販が隆盛を極めている。そこで今回小出さんは、「ショップチャンネル」など24時間通信販売を提供しているテレビ番組に着目し、その中から「化粧」をキーワードとし抽出した113番組(2017年7月中の10日間)の調査を基に発表を行った。

それによると、化粧品が売れているのは午前3~7時という未明から早朝の時間帯と、午前10~午後3時という昼間に集中しているのが分かる。また番組で紹介される化粧品は洗顔用の商品や美白クリームやジェル、ファンデーションやパックなど、スキンケア商品が目立つのも特徴的である。そして多くの番組は生放送であり、エビデンスと共に効能や使用感が繰り返し伝えられ、商品の特別感や期間限定性が強調されるだけでなく、番組を見ている視聴者からの問い合わせに即座に応える双方向性の“ライブ感”がその特徴であるとも報告された。

討議では、けして安価ではない化粧品を未明時間に「どのような人が購入しているのか?」ということが話題となった。そこでの議論は、生放送の双方向性が一見店頭での対面販売のような形式を担保しているが、ではなぜあえて自ら出向く店頭ではなくテレビ通販なのかというあたりで活発に意見交換がなされた。双方向性と言いつつ実はセルフ販売と同じなのではないか、高額化粧品をなぜ試用することなく購入するのか、テレビ通販利用者と店頭接遇販売利用者は重なるのか否か、ゲーミフィケーションとの関係等、議論は多方面に展開された。
今回の小出さんの発表は、近年の化粧品の販売形式の問題だけでなく、メディア化によって日常にVRが浸透する中で「対面」とは、つまり「顔と顔をつきあわす」とはどういうことなのかということをあらためて提示したたいへん有意義なものであった。

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